Japan DeskAugust 25, 2015 Foreign Direct Investment Policy of 2015: India2015年度版外国直接投資ポリシー:インド2015年度版外国直接投資(以下、「FDI」)ポリシーが最近発効されましたが、日本の投資家およびインド国内で事業を営む日本企業にとって重要となる主要な変更事項を以下にまとめました: A. 自動承認ルートによる投資に関する説明:(i) 自動ルートによる合併および買収(以下、「M&A」):以前の「FDIポリシー」は、非居住者が、合併・会社分割・統合スキームに基づいて新規設立会社の株式を取得しようとした場合、「外国投資促進委員会(以下、「FIPB」)」から承認を得る必要があるのかを具体的に明記してはいませんでした。新たな「FDIポリシー」では、自動ルートの対象である産業に対してM&Aが行われる場合には、FIPBの承認は不要であると明記されています。 (ii) 自動ルートによるNRからNRへの譲渡については政府承認は不要です:新たな「FDIポリシー」では、自動ルートの対象であるセクターにおける非居住者(以下、「NR」)間の株式譲渡には政府の承認を得る必要がなく、承認ルートの対象であるセクターにおけるNR間の株式譲渡には政府から事前に承認を得る必要があると明記されています。 (iii) 自動ルートによる「ESOP」に基づく株式の発行:新たな「FDI ポリシー」ではさらに、(自動ルートの対象であるセクターに従事する)インド国内会社が、その従業員またはその海外完全子会社あるいはジョイントベンチャーの従業員のうち、インド国外に居住する者に対して、従業員ストックオプション制度(以下、「ESOP」)に基づいて株式を発行する場合は、政府から事前に承認を得る必要はないと明記されています。 (iv) NRが証券取引所で株式を取得した場合のFC-TRS提出義務:新たな「FDIポリシー」の発効までは、NRが証券取引所で株式を取得した場合、どの当事者がフォームFC-TRS(NRが関与する株式譲渡の申告書)の提出義務を負うことになるのかについて、明確な説明がなされていませんでした。新たな「FDIポリシー」では、NR(非居住者であるインド人を含む)が証券取引所で株式を取得した場合は、被投資会社(その株式が取得対象となる会社)がFC-TRSを提出する義務を負います。 上記 (i)~(iv) は明確な説明に過ぎず、従来の「FDI」ポリシーの意図や目的に変化を及ぼすことはありません。 B. 同一法人に対して行われる追加的なFDI:新たな「FDIポリシー」では、承認ルート外国資本比率に準じて被投資会社またはその完全子会社に対して行われる追加的な外国投資は、政府の承認を改めて得る必要がないことが明記されています。 影響:以前の「FDIポリシー」は、承認ルートを通して同一の被投資会社に追加的なFDIを行う場合、承認の更新が要件とされているのかを具体的には明記していませんでした。今回の改定では、同一法人が承認ルートを通してFDIを受領する場合、承認が要求されるのは1回限りとなるため、FDI受領プロセスが効率化されています。 C. 被投資会社が支払う資金を対価とした株式発行:新たな「FDIポリシー」では、被投資会社によって支払われる資金(技術ノウハウ一時金や支払われるべきロイヤルティ料以外に)を対価として株式が発行される場合、その送金はインド準備銀行(以下、「RBI」)またはインド政府の事前許可を必要としないものであり、また発行自体も以下の条件を前提に認められるようになると明記されています: (i) 株式がセクター別の上限や価格設定ガイドライン等を含む現行のFDIガイドラインに準じて発行されること (ii) 株式が、支払対象の資金に適用される税法に準じて発行されること。また、株式を資本へ転換する際には、適用税を控除しなければならない 影響:以前の「FDI ポリシー」では、上述された資金以外を対価とした株式発行は規定されていませんでした。今回の変更により、被投資会社によって支払われるあらゆる資金を対価として株式発行を行えるようになるため、当面の流動性を確保できるようになります。 D. セクター特有の変更:(i) 鉄道:鉄道セクターに対するFDI規制緩和を視野に、鉄道産業の特定活動(官民連携による郊外コリドー計画(suburban corridor project)、高速鉄道プロジェクト、大量高速輸送機関等を含む)へのFDIは、鉄道省公布のセクター別ガイドラインに準じている限り、自動ルートにて最大100% まで許可されることになりました。したがって、新たな「FDIポリシー」下では、「禁止セクター(prohibited sectors)」リストが改定されて、「鉄道輸送」が「鉄道事業」に置き換えられたことで、自動ルートによる「鉄道輸送」への外国投資が認められることになりました。 影響:インド国内有数の輸送手段を担う鉄道セクターは、厳しい財務状況下にあるため、同セクターへの「FDI」は、そのインフラ改善を図るうえで極めて必要性の高い措置です。 「鉄道セクター」へのFDIの詳細な分析については以下のホットラインを参照してください: (ii) 年金セクター:新たな「FDI ポリシー」では、年金セクターへの外国投資には、2015年4月24日に発効され、従来26% であった上限を最大49% まで拡大した「2015年プレスノート4(Press Note 4 of 2015)」が引き続き適用されることが明文化されています。自動ルートでは最大26% まで可能で、26% 超49%以下 までについては「外国投資促進委員会(以下、「FIPB」)」による承認が必要となります。 影響:年金セクターにおけるFDI上限の拡大によって保険セクターへの資本注入が増大することとなり、結果として、同セクターにおけるイノベーションおよび卓越したテクノロジー導入が高まると見込まれます。 (iii) 防衛セクター:新たな「FDIポリシー」ではさらに、防衛セクターにおいても、一部条件の適合を前提に、政府承認ルートによるFDIの上限が(従来の26% から)最大49% に拡大されました。また、49% 超の投資提案については、ケースバイケースで審査されることになります。防衛セクターのその他幾つかの重要な変更については以下のホットラインを参照してください: 影響:防衛セクター投資に関連する以前の投資条件は、十分な数の外国投資を引き付けるのに有効なものではありませんでした。新たな「FDIポリシー」が規定する防衛セクターに係る条件は、インドが現代テクノロジーを利用して輸入規模を削減するのに効果を発揮するはずです。ただし、規制や当該投資に付随すると思われる承認レベルの存在から、外国投資を引き付けるうえで実際に効果をもたらすことになるのかは現状では不確定です。 (iv) 製薬セクターへのFDI:新たな「FDIポリシー」では、先に発表されたように、製薬セクターへのFDIに関わる変更が一本化され、「未開発(greenfield)」プロジェクトと「開発済み(brownfield)」プロジェクトへのFDIの100% が、それぞれ自動ルートおよび承認ルートの対象に規定されました(2015年1月21日施行の「2015年プレスノート2(Press Note 2 of 2015)」をご参照ください)。製薬セクターと医療機器が分類化されたことで、自動ルートによる医療機器セグメントへのFDIが最大100%まで認められることになりました。 影響:以前の「FDIポリシー」下では、医療機器セクターおよび製薬セクターは、全く異なる産業であると考えられていたものの、同様に扱われていました。新たな「FDIポリシー」では、そうした差異が認められ、製薬業界と区分けされたため、医療機器へのFDIは100%認められるようになりました。結果として、製薬セクターに適用される条件は医療機器セクターには適用されません。例えば、製薬セクターにおいては「競業避止」条項の規定は正当な法的根拠とされていますが、医療機器セクターにおいては望ましい効果をもたらさないでしょう。 (v) 保険セクターへのFDI:長らく待望されていた動きですが、政府は保険セクターに対するFDI流入の上限を従来の26% から49% に拡大しました。自動ルートによる外国投資は最大26%まで、そして政府または承認ルートによる投資の場合は26% 超49%以下 まで行うことが可能となります。保険セクターのその他幾つかの重要な変更については以下のホットラインを参照してください: ただし、「保険規制開発庁(以下、「IRDA」)」は最近の提案の中で、外資保有比率の更なる増加を望む全ての保険会社は、親会社レベルにおいてインド人に所有および支配されている会社のみを対象に、そうした外資保有比率の増加を許可するという基準を順守するべきだとしています。 影響:こうしたFDIに関する変更は他の面で規制を受けている保険セクターへの外国投資をさらに奨励するのみならず、同時にグローバル保険会社によるインド国内での事業設立を促進することになります。ただし、IRDAの提案が可決されると、大規模な多国籍企業によるインドの保険会社に対する既存の投資の継続・拡大の障壁となると考えられます。
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