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Japan Desk
February 26, 2015Auto Recalls & Product Liability in India
世界の自動車市場の見通しはかつてないほど明るい。年間自動車販売数が初めて8000万台を超え1たことで、自動車市場は今後数年に渡る株価上昇への手筈が整ったようだ。近年の好景気の中、財力と上昇志向を持つミドルクラスの急成長で、インド国内の消費者はパーティに繰り出すかの様相を呈している。
インドの自動車産業は規制緩和と経済改革以降、持続的な成長を続けている。100%の海外直接投資(FDI)は、自動車業界の自動承認ルートが適用され、世界の市場関係者2を 開拓、魅了しており、2000年4月~2014年8月までにインドの自動車産業界に蓄積されたFDIは、101億1968万米ドルにも達しているほどであ る。インド製造業の国内総生産(GDP)の22%を占める、自動車産業のめざましい成長は、直接的・間接的に大きな雇用創出元のひとつでもある3。
こういった好ましい傾向はさておき、世界の自動車製造業者を悩ましている深刻な問題は、安全性や製造上の問題に起因するリコールである。世界の自動車市場 では現在、リコールはごく当たり前の問題になっているようである。近年、エアバッグの不具合についての新たな報告がなされ、世界中で約1600万台もの車 がリコールされた。
自動車製造業者はインド市場では、これまでリコールの影響を受けてこなかったが、主要な自動車製造業者は、エアバッグの不具合やNCAP衝突試験の結果が芳しくないという理由で、“自主的に”国内でリコールを実施している。
さらに、2014年は国内海外の市場関係者を問わず、インドにおける自動車製造業者に対するリコール数が増加している。アウディ4、ホンダ5、日産6、マルチ・スズキ7な どの素晴らしく、かつ信頼性の高い自動車ブランドのいくつかを思い浮かべると、憧れの車としてのステイタスに相応しいこれらブランドの多くも、この数か月 間にインドの製造業の不備によって、リコールの犠牲になっている。インドで最近問題になっているリコール数を比べてみると、過去10年間にはこの半数のリ コールもなかったかもしれない。この突然の製品リコールの増加は、規制や製品製造責任制度に基づいて検証されるべきであろう。
自動車の安全性や規制についての法律を理解することは、順守すべきガイドラインや業界基準の制定に関わるために重要なことである。インド 自動車産業界の主要な法律は、安全基準1989(CMVR)を伴う自動車法1988 (MVA)である。MVAは排出基準、自動車の安全基準を管理し、自動車に関する法律を一元管理している。規定された排出限度の管理に加えて、CMVRは 車が順守すべき安全規制規則も設けている。CMVRの第5章は、特に車の製造、機器および保守について定めている。同様にCMVRの規則1268よって、試験機関により規則に順じてテストされる車のプロトタイプ提出が、全ての自動車製造業者に義務づけられている。テストをパスすると、試験機関によって製造業者へコンプライアンス証明書が与えられる。
道路交通省(MORTH)は、インドにおける自動車産業界の法規制、およびMVAとCMVRを施行する第一の機関である。法律作成にあ たって業界関係者が確実に関与するために、道路交通省は2つの委員会(中央自動車規則・技術常設委員会(CMVR-TSC)および排ガス規制推進常設委員 会(SCOE))から構成されており、これら委員会は、道路交通省へ自動車の安全性および排出規制について忠告を行っている。自動車産業基準員会 (AISC)およびインド基準局(BIS)は、製造業者が順守すべき自動車安全性に係る基準の草案作成や基準の施行についてCMVR-TSCを支援してい る。
自動車業界の安全性および排出規制の作成に際して包括的なプロセスが存在しても、インドには製品責任やリコールに対応する特別な法律がないため、製造責任および法規の執行には十分でないように思える。
製造物責任に関する苦情は、一般的には以下の法律に基づいて処理される。
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消費者保護法 1986 (CPA): CPA は、その第2節(d)に規定している通り、’消費者’に対してのみ保護を定めている。’商業目的’で製品を購入した個人が、本法律に基づいて苦情の手続き を取ることはできない。製品の不具合やサービスの不足、違法で有害な製品の使用または販売、行き過ぎた価格、公正を欠く取引慣行または制限的な取引慣行の 場合には、本法律に基づいて苦情を申し立てることができる。アバハヤ クマー パンダとバジャジ自動車株式会社9のケースで見られたように、製造業者ら は、大きな不具合がある製品(この場合は車両)を販売してはならず、品質検査で見落としがあった場合には、製造業者が欠陥を知ったら直ちに、この不具合の ある製品を市場または購入者から自主的に回収しなければならない。
そのため、自動車生産業者も情報に基づいて、不具合のある製品や車両の(自主的な)リコールをしなければならない。
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インド契約法 1872 (ICA)および 物品売買法1930 (SGA): ICAが特定の目的の契約に関する一般的な法律を規定しているのに対し、SGAは品物の販売に関した契約を規定している。ICAに基づき、不具合についての基準は、製品の保証と同様に契約条項や条件に依存する。
SGA は、買い手が売り手の判断に頼る状況、品物が売り手の説明によって購入されている状況、または取引慣行によって品物に 特別な目的がある状況における、あらゆる特定の目的に対する商品の品質または適合性に関する黙示的保証または条件を規定する。そのため、購入した車が動か ない(これは購入時の必須条件である)場合、売り手に苦情を申し立てる権利とともに、買い手には契約を破棄する権利がある。
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自動車産業に特化した法律: 前述したように、MVA およびCMVRは、インドの自動車産業における基準を統制する第一の法律である。運転免許取得に課される一般的な規則や安全ヘルメットの使用などを別にし て、MVAは車両の保守および製造に関する規定を定め、MVAに違反する車両販売に対して罰金を科している。安全基準に関してCMVR は、BIS仕様書(IS 1460-2000)に基づく商業用燃料の使用など、BIS基準に依存しており、車両全体の規格に関する一般的な仕様について規定し、例えば、インド自動 車リサーチ協会規定の基準などの自動車産業基準(AIS)を順守するよう求めている。BISはまた、自動車業界に対する強制基準、例えばニューマチックタ イヤのチューブに対する仕様書 (IS 13098:2012)も作成している。この法律では、中央政府もしくはBIS自体または団体から認められた消費者による苦情のみを許可しているが、こう いった強制基準を順守しない場合には、罰金または/および禁固刑含む重い罰則が科される。
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不法行為法および慣習法の原則 インドでは、裁判所も正義、平等、良心の原則および慣習法の原則によって厳しく指導されている。例えば、義務を怠ったことで怪我人が出た場合には、過失と されることがある。顧客に対して自動車製造業者が行うべき義務は、同乗者にとって大きな被害をもたらす、車両製造過程でのあらゆる不具合や見落としの事実 から簡単にチェックできる。そのため、製造業者に過失があり、それに起因する傷害や損害によって消費者が苦痛を被った場合、消費者は過失による不法行為の もとに製造業者へ苦情を申し立てることができる。
自動車のリコール
現在、インドで行われている自動車製造業者によるリコールは、インド自動車工業会(SIAM)の車両リコールに関する自主的行動規範2012(Code)に基づく、”自主的な”ものである。この行動規範では、自動車製造業者に対して、消費者への負担なく安全性10に及ぼす技術的な問題の自主的な是正を規定している。行動規範が自主的なものであることから、不順守に対する罰則についての取り決めはなく、強制力に乏しい。
そのため、コンプライアンスを有効に機能させる規則的な仕組みが無く、行動規範の有効性は疑問視されている11。 道路の安全性および車両の基準の規制および改善についての1つの試みとして、国内道路安全および輸送管理委員会法案2010の元に、国内道路安全方針 2010が提案され、道路の安全性の規制の確立が画策されていた。この法案中には政府安全基準の不順守に対して、最高100万インドルピーまでの罰金が規 定されていたが、この法案は日の目を見ることなく失効した。
インドにおける、自主的自動車リコール数のかつてないほどの増加によって、道路輸送安全法案2014(Bill)の導入も急がれている。この法案が現行の 形で通過した場合、規制制度について抜本的な変革となる。この法案が定められると、ドライバーや同乗者に危険が及ぶ恐れのある不具合についての苦情が 100件以上集まった場合、国内当局は製造業者に対しリコール命令を下すことができる。
現在の自主的リコールという状態からの大きな転換である。さらに、この法案は被害を受けた消費者への補償のしくみも規定している。
しかし、インド市場では近年までこれほど多くのリコールが起こったことがなく、時に自動車のブランドイメージが損なわれる自動車リコールを否定的な目で見ているだろうインド消費者のうちには、疑いの気持ちが存在し続けている。
この状態の打開のために、最善の対処をし、グローバルスタンダードを目指すことがインドには不可欠である。これこそが自動車製造業者の利益を上げつつも、消費者の権利を保護することになると考えられる。
協力 – フゼファ タヴァワラ、ヴィヴェック カスパリア、ニシィス デサイ協会
情報提供 アースタ イシャン